竹内まりや『元気を出して』

作詞・作曲:竹内まりや

カーリー・サイモンって歌手がいるじゃないですか。アメリカの女性シンガーソングライター。
『007私を愛したスパイ』の主題歌とか、聴いたことありません?
ジェームス・テイラーっていう、これもアメリカのシンガーソングライターと結婚してて、ラブラブで、理想のカップルだーみたいに言われてたんですね。

それが離婚しちゃった。捨てられちゃった。
その直後に、カーリーは『トーチ』ってアルバムを出したんですけど、これがもう、最初から最後まで失恋の曲。
表現力がすごいもんだから、悲しさ切なさがもうびしびし伝わってくるんですよ。もう痛いくらい。というかほんとに痛い。

これを聴いた竹内まりやも痛くなっちゃったんですね。慰めたい、励ましたい、と思った。
ちょうどそのころ、薬師丸ひろ子ちゃんに曲を書いてよという依頼があって、よしこれでいこう、失恋した友達を慰めて励ます曲を作ろうって。薬師丸ちゃんの天使みたいな歌声にぴったりだって。

そうしてできたのがこの曲、『元気を出して』なんですね。

シングルじゃなくって、『古今集』っていうアルバムの1曲目になったんですけど、これがもう大評判、大絶賛で、薬師丸ちゃんの代表曲にまでなっちゃった。
昭和59年のことです。

4年後には、竹内まりやがセルフカバー。
編曲は旦那さんの山下達郎で、ジェームス・テイラーを意識したアレンジ。……ええと、カーリーを捨てた人だよねその人。ちょっと天才すぎて意味わかんないんだけど。
バックコーラスには、薬師丸ひろ子ちゃんを招いています。あらためて聴いてみると、本当に天使みたい。

『元気を出して』は、そんなこんなで竹内まりやの代表曲にもなって、失恋した女の子を慰めまくり、励ましまくったわけですね。世代も超えちゃって、何万人か、何十万人か。

この曲のおかげかどうか、カーリー・サイモンも元気になって、昭和64年には『Let the River Run』っていう希望に溢れた曲を作って、アカデミー歌曲賞とか受賞してます。

イベントプランナー/劇作家
如月 伴内

ある時はイベント制作会社のプランナー。
またある時は某劇団の座付き作家。
しかしてその実体は、ちょいとミーハーな昭和ファン。