昭和のベストセラー本を令和の視点から読み返し、当時の社会に与えた影響や、現在に通じるメッセージを見出していくショート・コラム。
当時の読者であったターゲットにその時代をリマインドさせ、再読などもうながすことで、今を生きる活力を高めるきっかけを提供する。

第4回:昭和63年の一冊「東京ラブストーリー」

東京ラブストーリーというと私が生まれる前の1991年に月9ドラマとしてフジテレビで放送された大人気ドラマで、2020年のリメイク版も話題となっていました。
「東京ラブストーリー」というドラマがあることは幼い頃から知っていましたが、内容は知らず、昔に流行っていたドラマ。という印象だけでした。
今回、漫画を読む機会をいただいて読むことになりましたが、平成生まれの私は、この様な機会がなければ読む機会がなかったかもしれないのでよかったです。
 
ストーリーは田舎から東京の会社にきた永尾完治が幼なじみの関口さとみが好きだけど、関口は永尾の同級生の三上健一が好きで、永尾は関口に告白するもうまくいかず、知らぬ間に三上と関口が同棲を始めることになります。同棲にショックを受けた永尾だが、同じ会社の赤名リカに告白されて付き合うこととなる。という三角関係から始まります。
 
東京ラブストーリーを読んで感じたことがいくつかあります。
まず最初に気になったのは、内容ではなく、絵のタッチでした。私が普段読んんでいる平成以降の漫画と比べて絵のタッチから「昔」が伝わってきて、絵と内容から当時の情景が思い浮かぶな、、、と感じました。特に髪型と、ファッションが気になりました。女性の前髪が少しあって、ボブくらいの長さで、毛先が内巻きになっているヘアーやカチューシャ、今は見ることのない服のデザインなど、漫画だからこそ表現できる部分だと思います。当時のメイクやファッションを好んできている平成の若者も東京で見る機会がありますが、やはりどこか東京ラブストーリーの時代を感じる何かがあり、今流行のシースルー前髪と似ているので時代が巡り巡って戻ってきた様です。また、漫画では今はあまり見かけない、大人の難しい恋愛模様を描いたストーリーからも平成との違いを感じとることができて不思議な感覚です。いい意味で、私たち若者からすると、滲み出る古臭さが物語の味を出していました。

次に四人の恋愛模様が細かく描かれていてとてもリアルな感じが面白かったです。まだ、「社会」や「働くこと」を経験したことのない私ですが、傷を抱えていたり、すれ違ったり悩みを抱える大人たちが個人個人の気持ちをぶつけ合って成長していき、最後、リカのことも思いながら、永尾とさとみが結婚する。という結末がとても好きです。結局、さとみと結婚するのか!という驚きとともに、リカではないもどかしさがありました。また、リアルゆえになのかもしれませんが、登場人物の頭の中が色恋ばかりだったり、少しお花畑なところがあるので、なんかやだな。めんどくさい。と感じる部分もありました。
その中でリカの天真爛漫な性格がよく描かれていて、完治が大好きだという思いもとても伝わってきました。読んでみて、最初の三角関係からはじまり、完治がリカと出会って恋愛に対して変化する様子がメインに描かれていて作者さんは赤名リカという人物にかなり思い入れがある様に思います。そんなリカはいい意味でも悪い意味でも多分これから私たちが恋愛をしていく上で出てくる感情だったり言動が表現されているので一番好きなキャラクターです。
最後の「彼女はかつて、僕が愛した女です。赤名リカという左目のしたにホクロのある気のいい女です」からうかがえる完治のリカに対する思いが心に染みりました。
さとみと三上が同棲するシーンでは、好きだけどそれをはっきり伝えられない初めのもどかしさがとても面白くて、この物語は共感できることが多かったです。

まるでドラマ化するのがわかっていたかの様に作られたストーリー性で実際ドラマ化した際に、すばらしい人気を誇るドラマとなりました。ドラマと漫画では内容が違うみたいなのでドラマも見てみたいです。

恋愛にはつきものの男女の複雑な関係や共感できるリアルな感情表現が描かれているし、ファッションの面でも当時を振り返り楽しむことができる作品だと思いました。

XingLi(シンリー)

歌のパワーで人々の交流とハピネスを提供できるアーティストを目指して活動している
現役の女子大生